虎の一能

サイトを公にしてから10日と少しが経ちましたが、検索ワードで「甲斐犬 猟犬」というキーワードで来ていらっしゃる方がちらほらいるのだなあと思いました。それで、今日は猟の話です。

甲斐犬は、昔から「虎の一能」という言葉がある通り、教えなくても猟をする犬だと言われています。
その特質は鳴き止めやヒット&アウェイで足への攻撃で動きを封じるなど、「真っ向からやりあわない」ことだと聞きます。

甲斐犬は大きさにバラつきがあるとはいえ、多くは小型(昔は小さいものだと35~36㎝もザラにいた)だったので、鹿や熊に噛みついても倒せないのを自分で分かっているのでしょうね。吠えてその場にとどめ、あるいは逃げようとしたところを後ろ脚に噛みついて引き留め、主人が来るのを待つような猟のスタイルだったようです。

書籍「甲斐犬」を見ると、鹿や羚羊(カモシカ)、熊に使った「鹿犬型」、猪猟に使った「猪犬型」、あと「柴犬型」なんていうのも出てきますが有名なのは鹿犬型と猪犬型ですね。現存するのは鹿犬型だけのはずです……でもこの辺に突っ込むと物議をかもしそうなので気になる方はメールか犬舎に遊びに来て聞いてみてください。

ちなみにこの「型」は生息地によります。詳細はまたまた省きますが、同じ山梨県内でも生息地域と何を狩猟するかによって姿が違ったわけで、それがいっそう、他の種と交わらずに純血性を保ってきた証拠のように思えます。(環境に合わせた変化と固定)

私が学び、追いかけているのは鹿犬型なので、鹿犬型の猟についてです。前述のとおり、真っ向からやりあわずに獲物を足止めしたり、熊相手だと木の上に追い上げてしまって主人が悠々と鉄砲を持ってくるのをその場で待っているなどだ、と実際に猟を見た人から聞きました。
足が速く、岩場も駆け上がれ、多少の傾斜があれば木にも登ってしまうのでとにかく獲物を追うのが得意です。

これは普段、ただの山歩きでうちの犬たちを見ていても分かります。3メートル以上あるほぼ直角のはしごを上る牡、6時間も鹿を追って帰ってこない、1歳にも満たない小さな牝(鹿の水場を見つけて大興奮で呼びにこられたことがありますが……呼ばれても困る)。身体能力と体力は、小柄で細くてもおそるべきものがあります。
特に岩場や崖での追跡力と捜索力は日本犬の中でも群を抜いているのではないかと思います。あと、勇猛さもあるのですがそれを上回る慎重さで、自分の命を危険にさらさないことを優先するのも特徴と言えそうです。これが時に「臆病だ」と言われたりもするのですが……逆に取れば、長生きして経験を積んでいってくれる分、5~6歳ともなれば大ベテランの猟犬に育つのではないでしょうか。

相棒を早死にさせたくない猟師さん、お供に甲斐犬はいかがでしょうか。

鹿の水場を見つけて呼びにきた露虎、生後8か月。自分が鹿を追い駆けた後を一通り吠えて呼びながら教えてくれました。
足元には鹿の群れの足跡が……。呼ばれても飼い主は獲るすべ無しだよ。
すまん……
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